ACTIVEHAKATA produce vol.96 児童劇団ぽっとぽっけ2010年公演 ピエロ人形の詩



福岡のタレント事務所アクティブ・ハカタにある児童劇団ぽっとぽっけ。DVLメンバーも所属するこの劇団の2010年公演。例年は大人数のため大ホールで行われるが、今年はアクティブ・ハカタの地下スタジオにて、精鋭メンバーによる公演。
お題は「ピエロ人形の詩」。貧しい境遇にあって人生を悲観するひとりの少女が、ピエロ人形に出会い、成長する物語。私は昨年に少女:三角えみり・ピエロ人形:石丸雅理・進行:八木裕紀乃の同公演を観ている。演技による表現と歌による表現がバランス良く配置され、また何を演じるかについても明確に示されているために、劇団員の成長にも丁度良い内容だと思います。
今年は新進気鋭のメンバーによって、A公演・B公演のダブルキャスト。私が見たのは2日目。13時からのA公演と、15時半からのB公演、そして18時からのA公演最終。合わせて3公演でした。公演時間は50分程度。
ダブルキャストと言うことで、AもBも同じ内容とキャストを変えただけの同じ内容と思いきや。AとBで大きく雰囲気が違っていて面白かった。良く見るとチラシにも「今回は、キャスト・音楽等の異なる2バージョンでお送りします」と書いてありましたね。
アクティブ・ハカタ地下スタジオは、前面に座椅子があり、後ろは椅子。段差が設けてあり、ちょっと狭いが舞台は見やすくなっている。椅子の数は60ぐらいか。一番うしろにPA席が設けられていて、イケメンさんがいた。スタッフは劇団無限のヒト達がつとめていた。
A公演は四宮なぎさちゃんが少女役で、松浦みるちゃんがピエロ役。こちらは昨年のえみやり公演と基本的に同じ内容で、スタンダードバージョン。深い演技を楽しむにはこちらかな。どちらも非常に丁寧に演じていました。四宮なぎさちゃんの演じる少女は心象表現をはっきりと行っていて、切れの良い演技になっていました。役を理解して演じ、その世界を作り出せていたように感じました。普段のDVLとは違う、様々な心象表現(怒り感動し喜び悲しむ表情)に驚かされました。歌についてもなぎちょんが一番光っていたかな。松浦みるちゃんのピエロは独特の雰囲気。どんな辛辣な表現でも、彼女のピエロが演じると素直に心に入ってくる感じ。これがピエロという役に合っていて上手いものだなあと思いました。歌も可愛らしい感じながら、力強さもありました。
B公演は松山優里香ちゃんが少女役で、森淑乃さんがピエロ役。こちらは衣装がダンス系になっていて、歌詞はそのままながら、少女の反発がロックミュージックで表現されていたり、ポップで現代的な感じに演出されていました。全体の雰囲気はジェット団とシャーク団、みたいな。松山優里香ちゃんは少女を、激しい音楽とダンスで感情をよく表現していたと思います。まさに体当たりの演技で、それがとても良く舞台で生きていました。あと、セリフでの怒りの表現は凄かったです。正直怖かったですw それと松山優里香ちゃんはスタイルがいい!凄く格好良かったです。森淑乃さんのピエロはさすがといった感じ。上手い!! 一つ一つの細かい動作が、ピエロという役を表現していて素晴らしかったです。また、ピエロという役に独自の解釈を入れ込んでる様子もあり、こういう楽しみ方をも織り込んでくるのは演技派の森さんらしいなと納得させられました。松山優里香ちゃんの左足にテーピング。昨年の舞台もテーピングしてたな、なんて考えてました。
少女役・ピエロ役以外の子たちは通行人やコロスという妖精?役で舞台全体の雰囲気を作り上げます。A公演では可愛い白系統の衣装、B公演ではジャネットジャクソン風の帽子ありのカッコイイ黒衣装。振付もA・Bで違ってたかな。2タイプのダンスをそれぞれの場に合わせて踊るので、大変だったと思います。鷲尾美紀ちゃんは、眞名子寧々ちゃん、西岡優菜さん、高橋菜々美ちゃん。高橋菜々美ちゃんは一番最初に出てきたときに素晴らしい笑顔で、一気に目を奪われました。鷲尾美紀ちゃんはダンスの切れが良かったし、さすが最年長といった佇まい。寧々ちゃんのダンスも格好良く、目をひかれました。西岡優菜さんは綺麗さと笑顔が印象的でした。
あと、古賀將嗣くんが八百屋のおじさん役。おじさんのやさしい面を素直に演じていました。
公演のあとには幕が引かれ、出演者による自己紹介VTRとアクティブ・ハカタのCMが流れました。曲はPzUFzFYの歌う「渚zにまzつわzるエzトセzzラ」。自己紹介の内容は、松山優里香ちゃんはUFO研究をしたいとか言い訳を考えるのが趣味とか、歌って踊れる女優になりたいとか。西岡優菜ちゃんがオーストラリアの旦那さんとラブラブになるとか。高橋菜々美ちゃんは生ハロハロ言ってたり、たくさんの人に愛されるアイドルになりたいとか。松浦みるちゃんはピアノとかネコとか、舞台女優が夢。森淑乃さんは映画を観るのが趣味でカメラを向けられると変顔しちゃうとのことで変顔披露、夢は世界で通用する女優だったかな? 四宮なぎさちゃんは歌やダンスが好きで、カメラで山や海を撮ってるとのこと、夢は舞台女優。鷲尾美紀ちゃんも歌やダンスが好きで、チャームポイントはえくぼで「ニコっ」ってしてくれました。VTR編集により、高橋菜々美ちゃんのはNG場面が毎回流れてましたw あと、鷲尾美紀ちゃんの自己紹介が、DVLでは「リーダーの」だけだったのでちょっと新鮮だったかな。メンバーの意外な一面もわかる、とても楽しい自己紹介VTRでした。
そのあとには出演者全員によるおまけのダンスがありました。ぽっとぽっけのTシャツにチェック柄のスカート、大きなリボンが実に可愛らしい。某携帯CMで人気のあった木zzzzラのリzンガデzィンzzン♪リzンディzンドzン♪ってやつで、鷲尾美紀ちゃんを先頭にテンポ良く踊っていました。タップも入れたこのダンスの振付が音楽に良く合って可愛くってですねえ、すごく良かったです。思わずとりこになっちゃいました。舞台も楽しかったけど、このダンスもすっごく良かったです。
あとは気になった点をチラチラと(勝手な思いこみなので、読まなくて良いかも?)
四宮なぎさちゃんの演技にはハッとさせられました。なにより「演技」になってましたから。で、やはり見据えてるのはその先かなあとも思うんですよ。滑舌とか音節とかアクセントは、役者を目指してたらずっとついてくる部分なので、勉強勉強勉強しかないんでしょうね。出来て当然の部類か。あと、台詞をちょっと急いでしまうところは、場数をこなすしかないのかなあとも思います。一番気になったのは心象表現の部分です。怒りとか喜びとか悲しみとか、そういうはっきりした感情は実に上手く表現していたように思います。一方で、ピエロとのやりとりの中で少女が変わっていく部分の心の揺らぎとか、ピエロを失った悲しさから自分がピエロの代わりに他の人を励まそうとなる感情の移り変わりの部分が、まだ上手く表現できていなかった(受け止められなかった)。この舞台では、ここはキモとも言える部分なので、そのあたりの微妙な感情表現も出来るようになるともっと素晴らしかったかなと思います。
わからなかった点と言えば、森淑乃さんのピエロの部分の一部。ピエロが登場するところでロボットのような片言で台詞を読んでいましたが、あれは何を意味するのんでしょうか。少女と係わるうちに、ピエロも成長をしていたという表現なのかな。始めの少女とのやりとりが実にトゲトゲしく皮肉が心に刺さってくる感じで表現されてて、「これは現代的な皮肉を効かせているのかな?」と思いましたが、最終的にはA公演の純粋なピエロになってしまっていましたし、このあたりがよくわからないな。演出の枠の制限を超えられなかったとか、役者で出来る最大限の演技の幅を使った結果なのかなとも思いました。演出の制限がなければもっと役者自身の解釈が広がった形で見られたのかも、なんて思っちゃいますね。森淑乃さんの表現力が高いだけに。
演出の制限と言えば、児童劇団と言うこともあり、全般的に実に演出が効いた芝居内容になっています。だから基本的には誰が演じても同じようになるんだと思います。その性格については「児童劇団」という枠があるからには当然のことなんですが、一部制限が効いてなかった部分も目につきました。なかでもピエロとコロスたちによる歌とダンスの部分。コロスたちはいわば風景としてピエロを飾り立てる、場を表現する位置にあると思うんですが、歌とダンスの部分ではしばしばコロスたちがピエロを食っている場面が多々見られ、一部バランスを欠いているようにも見えました。ここの調整は「監督」じゃないと出来ない部分なのかなあと。その他の部分で演出が実によく効いていただけに、目だった部分のように思えました。
スタンダードで表現力を鍛えられるAパターンがあるならば、Bパターンは台詞も変えてもっと現代的な皮肉の効いたものになってたらもっと面白かっただろうなーと思いつつ、でもそれだったら脚本から変えないといけないから大変なんでしょうね。音楽もダンスも変えてきたところは素晴らしかったんですが、それだけに色々妄想しちゃいますね。
なんにせよ、思った以上に楽しい公演でした。ありがとうございました!
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