FMシアター「タツ子さんの一日」感想

名古屋局制作 2013年7月13日放送
平成24年度NHK名古屋創作ラジオドラマ脚本募集佳作
作:永田裕美 演出:東山充裕 技術:櫻岡恒介 音響効果:大西斎
出演:伊藤友乃 太賀 田中靖浩 手嶋仁美 石河美幸 中田裕子 宮璃アリ 山中崇敬 林真美 内田藍子
あらすじ → タツ子さんの一日 | NHK オーディオドラマ
ドラマのはじめに主役の高齢の女性が、あからさまに悪意のあるセミナー勧誘の男とやりとりし出したところで、騙されて陰鬱な作品になるのではと恐れを抱いた。それはここ最近聴いていた老人もののラジオドラマがそういうタイプのものだったからだ。
しかし、実にしっかりした主人公ははっきりとセミナー勧誘の男をやり過ごす。その後、弁当配達の若い女性や近所の人たちとのやりとりなど、ごく普通の人たちとのごく普通なやりとりが描かれる。しごく、ごく普通のやりとりなんだけど、それが主人公のしっかりした人柄により、じつに小気味の良いやりとりになっているため、とても心地が良い。
展開も上手い。夫に先立たれた独居老人を描きながら、近所の人たちとのやりとりで一見家族がいない寂しさを感じさせながら、最後は祖母思いの明るい孫とのやりとりを見せるなど、懸念される影の部分を一つ一つ揉みほぐし、最終的にごく普通のことなのに、それ自体に幸せを感じさせている。
題名の"タツ子さんの一日"は、ちょこっとは寂しさなんかもあるけれど、ひとつひとつがしっかり地に足ついた、普通の、それでいてタツ子さん自身の魅力にあふれた一日でした。またなぞりたい一日。
とても気持ちの良い作品でした。