吉村昭「彰義隊」(朝日新聞出版)

吉村昭歴史小説に手を出そうと考えて、読みやすそうな本書を手に取った。彰義隊にかかわる話かと思ったが、主役は輪王寺宮能久親王。皇族でありながら上野の山の主でもあり、明治新政府に対する欧州列藩同盟の盟主となった人物。徳川慶喜の助命嘆願から台湾出兵能久親王の死までを取り扱っている。
能久親王のことはあまり知らなかったが、とても興味深く読み進めることが出来た。さまざまな立場の能久親王が見られるが、やはり一番は上野からの逃避行の描写だろう。筆者自身が取材したということもあり、逃避行時の大水や道ばたに捨てられた大量の弁当がらの描写がなされるなど、かなり綿密な内容となっている。
面白かったので、また別の吉村昭歴史小説に手を出してみようっと。