人として

ハンセン病問題検証会議最終報告書を読んだ。これほど真に迫り、人間というものへの自覚を促す文章は久しぶりだ。そこにあるものに目をつぶり、ただ受け流してきた結果生じた深刻な問題。その問題そのものの酷さは、今日の文明社会においてあるまじきことであり、それは文明社会をどんなに謳っていても、それを積極的に守っていく意志と行動がなければすぐに陳腐化してしまうことを表し、そのことに対し警鐘を激しく鳴らしている。特に身にしみた部分としては「入所者の権利主体性を認めず、あくまで恩恵・慈悲の対象にとどめようとした」というところだ。これは療養所の所長らに向けられた言葉だが、それはそのまま我々にも結びつく。元患者が恩恵・慈悲の対象から離れ、一人の人間として自らが持つ、人としての権利を主張したとき一転して非難される側になる。つまり慈悲の対象として見るということは、一人の人格を持った個人としては見ていないということである。これは私も含めた多くの人の盲点なのではないか。慈悲の心は一方で見下すことでもあり、それは一個人を一人の人間としてみていないことでもあるのだ。このわずかな差こそ、人間の持つ文明社会の落とし穴だ。
それだけにとどまらず、この最終報告書が我々に教えてくれることは多いのではないか。読み返すたびに、次から次へと考えが広がっていく。