母、入院1日目。結局、仕事で立ち会うことが出来なかった。
母が癌であると言うことを聞いたのはもう数ヶ月前。その時はさすがに頭の中が真っ白になってしまったが、数々の検査のおかげかまだ早期発見の段階である事がわかり、少し安心することが出来た。やがて入院・手術先も決まった。症状が重い人の手術が先であると言うことで、手術予定日はどんどん後にのばされていき、ようやく今月5日が手術の日と決まり、そのための入院である。
こうして日が延ばされると言うことは症状の軽さを示すことであり、一部では安心感もうまれた。しかしいつまでも成されぬ手術というものが言いようのない不安感を与えるのも確かである。また、いくら軽いとは言え、お腹を開くと言うことはそれなりのリスクが伴うことであり、何が起こるかわからない。だからこそ、辛い数々の検査を母は受けてきた。
母の今日の入院には兄に付き添ってもらった。兄弟として色々思うところがある兄だが、こういうときにはやはり頼もしい。
今日、上司に日曜に休日出勤しろと言われた。以前から母の入院のことは言ってあったのにだ。初めての大手術で不安を抱えている母に、休みの日ぐらいはついていたい。それも、手術の直前だからこそ。上司にそう告げ、この週末だけは無理だと伝えた。
それでも上司は納得しない。上司が言うには男性陣はみんな出勤するからお前も出勤しろというものだった。「それは命令ですか?」と聞くと、上司はためらいなく「命令だ」と答えた。上司が自分に命令を下すことが出来るのは業務に関することだけだ。よってこれは業務命令である。つまり会社の方針として日曜の出勤をしろと言うことだと了解した。
業務命令であるからにはもちろん無賃金ではないはず。これで無賃金であれば、何の命令であったのだろうか。彼にはそこまで私に関わる権利はないはずである。それが正規の休みである限りは。無賃金であった場合は、彼が業務命令を下した根拠がなくなる。私が言いたいのはお金云々ではない。通常であれば普通に無賃で休日出勤している。そう言う仕事だと、納得はしていないが、理解はしているからだ。しかし、この状況でそういうことをするのであれば、ケジメをつけるのがスジであると考えるのだ。そのケジメを彼がつけなかったら、私はそれなりの対処をしようと考えている。仕事と家族では、当然家族こそ優先されるというのが私の考えだからだ。こんな理不尽な業務命令を下した上司を、今後永遠に許すことは出来ないだろう。
また、手術後の母に何かあれば、私は人として上司に復讐をしなければいけないだろう。不安な状態である母をそのまま放り出して仕事に行く罪は私にある。その罪を、どんな形でか償わなければならない。そのことについては、あらゆる事を考えて、事に臨むほかないと考えている。