明月

朝、あまりの寒さに目を覚ます。また扇風機をつけたまま眠っていたようだ。ぼんやりしながら朝の準備をしていたら、整髪料と間違ってシェービングジェルを髪の毛に塗り込んでいた。二三回塗ってようやく気付くボケボケ具合。三連休後で今日は早出だったのだけど客商売だから如何ともしがたく、急いで髪を洗い、直す。
業中、雑事が激しく忙しい。おかげで、しなければならないことが次々と後回しになってしまった。結局、夕方過ぎから月末にむけた稟議を書き出したりしたのだけど、夜にはお客さんとの約束もあり、途中で投げ出した格好にて外交。戻ると21時を越えており、ぎゃふん。今期末はもう諦めてもいいですか...? なんて聞けるわけもなく、明日も頑張ります。
とぼとぼ歩いて帰宅。月がギンギラ気持ち悪いほどに輝いていた今日は中秋の名月
帰宅して、やるせない気持ちで読書。昨日買ってきた本に手を出す。

 私はそこに、円柱形のビスケットの缶を置いた。なかにいろんなものを入れ、ボンドで蓋を接着して。
 それはあの頃やたらと流行っていたタイムカプセルだった。いろんなものを詰めておいて、未来になったら開ける。あの時代、なぜかいろんなところにそんなものが埋められた。テレビのニュースなどでもよくやっていた。
 私はその真似をして自分のタイムカプセルをそこに置いたのだ。誰も知らない私だけの空間に。
 だが、その缶のなかに入れたものは、中学生になっていた私にはすでになんの未練も思い入れもないものになっていた。
 なぜ、あんなものをわざわざ缶に入れて天井裏に隠したりしたのだろう。
 自分でもわからなかった。自分がもうあの頃の自分ではなくなってしまっているというのはなんだか不思議な気がした。

人面町四丁目 (角川ホラー文庫)

人面町四丁目 (角川ホラー文庫)

いきなりぐっと来た。